さて、今回のコラムは「過去の音楽」にも焦点をあてた、以前のコラム「洋楽も聴こう」(1)からのスピンオフといった内容です。
みなさん、『温故知新』という言葉をご存知ですよね。
「歴史や過去から学び、新しい見解を導いたり、今の自分の糧とする。」 という意味です。
若いうちは何事においても経験というものが圧倒的に少ないわけですから、音楽も例外ではなく、聞く量も比較も未だ少なく、耳も肥えてなくて当然だと思います。
一般的に、まずは誰にとっても青春期に耳にする「流行もの」は、音楽への最初の興味や入口になることが多いはずです。
そして、お気に入りとなったアーティストと共に、その後、時々に流行するアーティストや楽曲で、日々を彩り過ごしていくことが一般的でしょう。
「歌は世につれ、世は歌につれ」という言葉があるように、現在のシーンを俯瞰して、参考にすることも必要ですね。
しかし、例えば、下の図のピンク色の箇所は、2000年から現在までの日本の音楽を聴いたとする所を視覚化した部分なのですが、それは長い音楽史の中で見ても、 またワールドワイドな視点で見ても、ごくわずか、ひとつまみであることが分かります。(下の図を参照)
しかも、ピンク色にした部分の全部も聴けておらず、その多くは流行ものであるでしょう。
現在では、ネットが少しは見聞の役割を果たしてはいますが、多くはアルゴリズムが取り入れられ、閲覧者の好みを選び表示するわけですから、本当に自分の中に無い新しいものへと、どんどん見聞が広がっていくかというと、満足ではありません。
これらは自然で人並みだとも言えますが、プロ志望者はもっともっと見聞量を増やしていきたいところです。
音楽の歴史は古く、現在までに様々な音楽や才能を持ったアーティストが出現し、シーンを作ってきました。
そんな過去の音楽やシーンには、多くの参考となる実例・結果があり、これらはプロ志望者にとって大きな価値を持つものです。
未来のことは誰にも100%の予測は出来ませんが、すでに結果が出ているものからは多くのことを学ぶことが出来ます。
例えば、ジャンルと声の関係性を感じ取れたり、民族性と傾向が感じられたり。
テクニカル的指向やデジタルな音を求めた反動として時代はシンプルな音へ回帰することや、音楽はダンスミュージックとしての発展、ポップ化が度々起こってきたことなど。
過去の音楽を知ると、現在の音楽といえども、そうそう目新しいものなど無いということも分かるでしょう。
また、多くのジャンルや曲を知ることで、作曲や楽曲制作においての発想やアレンジの幅も広がります。
モータウンレコードを知らない人はモータウンのサウンドを作れないはずですし、ホーンセクションのアレンジをしたいならば、ホーンセクションの入った楽曲を聴き込んだことがなければ、発想しにくいでしょう。
ハモンドオルガン、ロータリースピーカーの良さを既に知らしめたような名曲からは、その楽器の特性や、効果的に使用できるシチュエーションなどを、簡単に伺い知ることができます。
過去の曲も含めて、多くの曲を知るということは、すでに結果を出してきたボーカルの特性や過去の良音、サウンドメイク法まで知ることにもなります。
歌唱や創作のスキルを手っ取り早く上げる、何より簡単で質の高い方法だとも言えるのです。
プロと呼べる作家さんの多くは、現在のシーンの動向と共に、過去の音、また海外の音からも多くのことを学んでいます。
豊富な過去の音楽シーンや海外の音は、良質な教材、”宝”とも言えるものですから、プロを目指す人は一般よりも見聞を広めて、自分の夢への糧としていきましょう。