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フィールド・ハラー(2)

フィールド・ハラー(2)
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前回のコラムでは、R&Bやロックなどのルーツについて触れましたね。
じゃあ、この現代までのジャンルの進化の中で、何が起こってきたか。

これは1つには、文明が進み、商業化・産業化が音楽にも起きてきたということです。
黒色人種の感情の叫び「ハラー」だったものが、自分の歌唱や演奏がチップになり、音楽がお金となり、産業になりました。
すると、歌い手や制作側は、より儲けようと、いっそう人々に受けるもの、一般にも聞きやすいものを意識して作るようになります。

これが「大衆化」。
いわゆる「ポップ化」「ポップス」です。

例えば、ポップ化というのは、サウンドの聞きやすさということも含め、その時代や国柄などで、一般に共感しやすい題材となります。

サウンドや歌唱面は一般にも聞きやすいように、ヘヴィ過ぎず軽くて耳障りがよいもので、また詩などの世界観は、人であれば誰もが経験するであろう一般的な淡い恋心などをモチーフにしたものなどが、ポップ化というフィルターやスタイルには多いでしょう。

ですから、なんだかんだ言っても、世に流れるようなヒットソングの大方は、ポップと言っても過言ではないのです。
ポップ化は悪いことではありません。
大衆に認められて名を売るからこそ、自分の音楽が周知されて、自分の本質、それ以外の作品までを一般にまで認めさせることもできるのです。

例えば、レイ・チャールズがレコード会社の移籍後の1960年にリリースしたアルバム「ジーニアス・ヒッツ・ザ・ロード」は、それまでの強いR&B色から、一般にも受け入れやすくさせるために、アメリカの州をテーマにした曲を収録するという工夫がされたアルバムで、これによって人種などを問わず、アメリカの全国民に受け入れられた作品となりヒット。
レイ・チャールズの名をあげるものとなりました。

↑アルバム「ジーニアス・ヒッツ・ザ・ロード」

ただ、このように人々に聞いてもらうためのポップ化は「戦略」とも言えますが、レイ・チャールズはポップシンガーだと言えるでしょうか?
パンクロックのセックス・ピストルズやニルヴァーナ、メタルロックのメタリカ、彼らの評価はどうでしょう。
どれも、時代や聴衆の方が望んだ、カリスマとして名を残すようなバンドではないでしょうか?
決して世間の顔色ばかりを伺ったものではないはずです。
(僕は特にパンクやメタルロックが大好きで、持ち上げていると言うわけではないです。)

ここで言いたいことは、あなたに本当のメッセージや伝えたいことがあるのか、叫びたいほどのエモーション、感情の爆発があるのかということです。

先述したように、ポップセンスはヒットという観点から大事な戦略でもありますが、逆に言えば、エモーションの本質は、ポップでは無い所とも言えます。
また、本来、フィールド・ハラーという所からの派生も考えれば、R&Bやロックというならば、叫びが不可欠な要素ともいえるでしょう。
叫びがあるからこそ強いメッセージが生まれ、声や歌唱にはシリアスさや重さ、心の闇やエグみまでもを映し出すような、アイドルではないカリスマと言われるようなアーティスト要素が作られると思います。

作曲で悩む人も多いですが、売れたいとか評価されたいと思うばかりで、自身の本当の心の叫びを失くしてはいませんか?
本当にあなたが何が何でも誰かに伝えたいことや、胸が痛み、疼くことは何ですか?
心の中に生まれる葛藤や矛盾、愛しさ、憎しみや怒りなど、この世の中や誰かに対して、抑えきれない感情、あなたが歌でしか現せない気持ちはありますか?

叫び・メッセージは、言うならば素材。
素材をどう調理するかの技術やポップ化も必要ですが、叫びが無ければ、その作品に本当の輝きは生まれず、いずれその創作は行き詰まるでしょう。
本気の心の叫びがあるからこそ共感も呼ぶのです。

また、例えば、戦争がダメだ、差別がダメだ、あぁだこうだと言えるのは、それを深く理解しようとしたからこそ作られる核心的な感情や自分なりの解釈、メッセージが生まれるからです。
物事を知らないのは、知ろうとしないのは残念なことです。
何の特別な感情やメッセージも、議論も発展も、もちろん良い結末を導くような、脚本も生まれないからです。
だから、前回のコラムでは、それらについても少しは知っておいてもよいでしょうと言ったわけです。

ポップセンスも必要ですが、大衆化を意識するがあまり、大衆に媚び過ぎてもいけません。
日々の中での矛盾、不満や怒りなど、尽きぬ想いが沸き上がる感性を持って過ごし、想いを叫びましょう。

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この記事を書いた人

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