アスリートや歌手が、加齢と共に直面する問題が、身体能力の低下です。
年末年始は歌番組や特番が組まれ、多くのアーティストの歌を耳にする機会が増えますね。
こういった番組や祭典では、トレーニングをしている人と、していない人の差が露呈します。
例えば「年忘れ にっぽんの唄」に「紅白歌合戦」。
どちらも、最後まで見入ってしまったのですが、 美空ひばりさんの「悲しい酒」や、五木ひろしさんの「千曲川」。
八代亜紀さんの「舟唄」などは、作品も歌唱も素晴らしく、 なかでも八代亜紀さんの声や歌唱は、歌手としてのレベルの違い、格の違いを感じました。
おおまかな評価として、演歌歌手はピッチも良くて上手な方が多いのですが、これらのアーティストの歌唱は、それに加え、素晴らしい個性と侘(わ)び寂(さ)びのような精神的にも完成された円熟味が歌唱に憑依し、表現力として観てとることが出来ます。
こういった方々は日々のトレーニングをしっかりされており、常に歌うことが多く、結果、喉の衰えや技術力の低下も進行しにくいと考えられます。
しかし、久しぶりにパフォーマンスされる方などの中には、声や発声機能が衰え、残念ですが歌唱に影響していると思われる方もおられ、キーを下げていたアーティストも少なくありません。
やはり、加齢やトレーニング不足による身体能力の低下は、走ったりするような大きな運動に限ったことではなく、発音に関わるような小さな筋肉群も例外ではないのです。
お爺さんやお婆さんが、お爺さんらしい、お婆さんらしい声になるのは、そういったことによる発声機能・身体機能の低下が関わっているからです。
自分の経験上でも、20代までの歌唱は精神性や技術が未熟ですが、ヴィジュアルやパフォーマンス、身体的能力でサポートされており表現される印象です。
この頃は身体的能力・パワーは有り余っているのですが、全てに対して「ぞんざい」で、扱いや感覚、考えが荒く甘いですから、丁寧なトレーニングの積み重ねと歌唱・表現力の糧にもなる精神的・人間的成長が望まれます。
30代からは少しずつ身体機能が衰えてくるのですが、精神性は高まってきます。
それまでと同じ練習の継続ができている人であれば、衰えの自覚は大してないでしょう。
ただし、日々の怠慢や不摂生をしている人はスキル低下を感じ、単純に体型にも現れます。
40代以上にもなると、日々トレーニングしている人と、トレーニングしていない人の差は歴然となります。
昔のキーが出ない、声量が落ちた、声が伸びない、口や言葉が回らない、歌いきれない、喉疲労の回復などといった点で、多くの人が機能の低下や衰えを感じ、自覚します。
この年代以上のアスリートや歌手で、クオリティやパフォーマンスを落とさず、スキルを維持している人は凄いです。並々ならぬメンタル、若い者の何倍もの努力があるはずです。
このように、30代・40代からは肉体的には衰えとの戦いでもありますが、日々のトレーニングは衰えを防止し、確実に自分のスキルを磨いてくれます。
きちんとトレーニングすれば、心・技・体が揃う年代でもあり、よい表現や作品を打ち出すことも可能だと言えるでしょう。
一般的には、なにより健康やダイエットにもよいですし、お爺ちゃん声、お婆ちゃん声にならないように、楽しくボイトレやカラオケなど、歌ってストレス発散しながら、喉を鍛えることをおすすめします。
なんだか、高齢者についてのコラムとなったので、最近の歌手の印象も少し。
最近の歌は、全般的にキーが高いので、喉の筋力が必要となります。
それらは、若さのメリットで作られているものも多く、裏声やミックスボイスを使用したものも多い印象です。符割やフレーズは機械的で細かい印象でリリカル* であり、歌唱からは人間臭さや大人っぽさは、あまり感じられません。
ビブラートなどの歌唱技術をあまり要しませんから、歌うというだけであればミックスボイスなどの発声を作ってしまえば、案外簡単なものも多いです。
ただし、前述した身体的な衰えという点で考えると、今のアーティストが何十年後かに、懐メロとしてメディアに登場するときには、かなりしんどいかもしれませんね。
そして、何より一番、苦言を呈したいのは、最近の若いアーティストはピッチが悪いこと。
レコーディングや修正技術が向上した現在は、音源としてのクオリティは一般の誰もが作れても、TVでの生歌唱ではスキルが露呈してしまいます。
大勢で歌うことで誤摩化せるものは論外として、ソロシンガーは演歌歌手を見習い、もっと技術を向上させてほしいですね。
声や歌唱力は、ちゃんとした練習と継続が出来れば、絶対に磨かれます。
年配者も若い人も、それぞれのメリットと弱点を強化して、もっともっと歌を楽しんで追求してみてほしいと思います。
*ここでの僕が指し示す「リリカル」という意味は、「話す様な、読む様な」といったものを指しています。