梅雨も明け、ここから暫く夏本番となりますね。
ジョギングも炎天下ではさすがに厳しく、外とエアコンの効いた室内との温度変化など、ボーカリストにとって健康管理も難しい季節ですが、ボーカルはバンドの華やかなフロントパートでありながら、高パフォーマンスを維持するためには機能や技術の維持向上に日々の地道な鍛錬を要しますから、プロ意識のもと体調管理にまで気をつけて、積み重ねたスキルや練習の質を落とすことがないよう、この酷暑を乗り越えましょう。
さて、今回は歌唱の主役となる”声”や”歌唱”に大きな影響を与える”ブレス”(息継ぎ)について、少しコラムしたいと思います。
そもそも人間は、吸気と呼気(発音)を繰り返して、フレーズを紡ぎ、歌唱を組み立てています。
歌唱の基盤となる呼気を生み出すためには、肺にしっかりと取り込む吸気が必要なのです。
しかし、歌のフレーズはさまざま。
短いものや長いもの、音程の動きも、要求される声色も千差万別です。
そのような多種多様なフレーズに対応し、毎度、肺に取り込んだ息をフレーズ終了と同時にぴったりと使い切ることは至難の業。
通常は、余裕を持ってフレーズを歌いきれるだけの余力(息)を残して、次のフレーズの準備のためのブレスを行うことになります。
しかし、試してみてほしいのですが、肺の中の息を吐ききらずに息を残したまま、その上から足すような吸気を繰り返してみてください。
また、練習している曲があれば、朗読でかまいませんので、ブレスポイントで残った息を捨てずに、上から継ぎ足すようにして最後まで朗読してみて下さい。
どうですか?
力み(りきみ)を誘発し、とてもしんどくなりますよね。
フレーズ同士の間合いなどによっては、どうしても捨てきれないまま取り込みを行うところもありますが、歌唱のための良い準備を作るためには、フレーズで使用しきれなかった残った息を、なるべく次の吸気前に捨ててゼロから新たに吸気することが重要なのです。
しかし、案外、この”息を捨てる”という処理が上手く出来ないことから、力み(りきみ)などが誘発され、様々な発声時の問題が作られている人を多く見受けます。
また、声ではない所ですから、講師も気付きにくく、問題を指導されている人も少ないようです。
捨てられない原因は、”緊張” や “リキミ”、”リズムやグルーヴに乗れてない”など様々ですが、上手く歌えないという人は、ぜひ呼気の処理にも気を配ってみて下さい。
以前紹介した心肺能力向上アイテム「パワーブリーズ」も、低負荷でかまいませんのでメロトノームを併用して、吸気後の呼気で、一定の間に肺の中の息を完全排気をさせるようにして行うようにするのもよいですね。
尚、息を捨てることの発展・応用として、ロックやR&Bなどの現代音楽ではノイジーブレス同様、この捨てる息を言葉に混ぜてニュアンスを付けながら捨てること(“語尾を捨てる”技術)もあります。