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ベートーヴェン捏造

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さて、スタジオ移転もあって、ここ数か月は大変慌ただしく過ごしているのですが、お盆休みには映画「ベートーヴェン捏造」を観ることができました。

原作は2018年に発刊された、かげはら史帆さんの「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」という書籍で、脚本にバカリズムさんを迎えて映画化したもの。

書籍「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」

ベートーヴェンの執事・秘書を務めたシンドラーが、敬愛するベートーヴェンのイメージを守るために様々なことを捏造した事件を映画にしたノンフィクション作品で、そこから実際のベートーヴェンの実像も見えてくる、音楽好きにはおすすめの一作です。

映画では、ベートーヴェン役に古田新太さん、 シンドラー役は山田裕貴さんが演じられ、その他のキャストも染谷将太さん、神尾風樹さん、小澤征悦さん、生瀬勝久さん、小手伸也さん、遠藤憲一さんと豪華な顔ぶれです。

映画「ベートーヴェン捏造」

ベートーヴェンのような偉人や有名人になると、様々なことにも”尾ひれ”が付いて、特別さを際立たせて大げさに語られがちです。

例えば、ベートーヴェンはコーヒーを飲むときに必ず60粒の豆を挽いたという話も有名ですが、これも現在では違ったといわれています。

シンドラーの行った捏造をすべて肯定することは出来ないですが、現代においても芸能人などは戦略的にも運営的にもイメージを作ったり守るために、何らかの画策が作られることは珍しいことではありませんね。
ただ、シンドラーはベートーヴェン本人やベートーヴェンのことを深く知るものが亡くなったあとにも話を捏造し、伝記を出版するまでに至ったことが問題。

ちなみに事実なこととして、ベートーヴェンの耳が聞こえなくなったことは一般にも有名ですが、そんな状態でどうやって、ベートーヴェンは数々の名曲を作曲したのか、気になりませんか?

ベートーヴェンは、現代でいうところの「進行性感音難聴」「耳硬化症」というような病だったと推測されていますが、20代半ばから徐々に聴力が奪われ、40歳半ばで完全に失聴しました。

幼少期からのピアノの訓練により会得した絶対音感や演奏スキルも作曲の支えになったのですが、映画でも出てくるように、今では考えられないほどの大きな補聴器(音を集めるラッパ型の器具)を使ったり、ピアノの足を切り取って床に直置きして音の振動をより感じられるようにしたりと、様々な工夫と努力をして作品作りに挑みました。

面白いことに、耳が聞こえていた頃の若いころのベートーヴェンは凄腕のピアニストとして即興演奏などで活躍してはいたものの作曲家としてはまだ無名で、聴力に支障が出てきた20代後半に、当時の音楽界においては珍しい、激しくドラマティックな感情的な作品「悲愴」(ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 作品13)で注目されると、30代半ばには、それまでの音楽家の作品とは桁外れの大音響と50分を超える核心的な大作となった「英雄(エロイカ)」 (交響曲第3番 変ホ長調 作品55」でブレイクし、その名前を決定的なものにしました。

ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ全集&ピアノ協奏曲全集」(CD12枚組)

問題なく耳が聞こえていた若い頃の創作では、多くの人と同じように世間での流行も自然と意識していたようですが、聴力が弱くなっていくにつれ、音楽との向き合い方に変化が生まれたといわれています。

ベートーヴェン交響曲全集(6CD)

高音の主張から低音や全体の響きというものへと意識を傾けるようになり、耳が聞こえなくなるにつれて世間の流行の音とは切り離され、完全に自分の心の中にある音や感情と向き合うような変化が生まれたといいます。

結果、誰の真似でもない唯一無二の人々の心を揺さぶるような作品を創作できたともいわれており、もし耳が健康なままであったら、優秀なピアノ奏者の一人で終わっていたのではないかとさえ言われています。

今はネットやSNSなど、とてつもない情報過多の時代であり、流行り廃りのスピードも速いものです。
文明から閉ざされた少数民族が独自の文化を守り築き、結果として特殊性や希少性を持ち合わせるように、常に多くの情報・雑音がある現代は、本当の自分の中から生まれた芸術や新しいものを生み出すことが難しい時代だと言えるかもしれません。

自身の心の中にある音や感情と向き合うということの大切さを、映画「ベートーヴェン捏造」から、あらためて感じました。

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この記事を書いた人

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