さて今回のコラムは「質より量」がテーマ。
「質より量」って言葉、一般的には何だかあまり良い印象は持てないですよね。
しかし、とくに駆け出しや新人の頃にはスキルアップに大きな影響を及ぼす意識。
なんとしても実践したい心がけです。
そもそも人間は生まれてすぐには話すことができません。
発語・発声機能は成長過程において、実際に発音を繰り返して育む機能です。
歌唱ともなれば、ピッチコントロールやブレスコントロール、滑舌、ミックスボイス、エッジ、ビヴラート、グルーヴなどの様々な高度な技術を要するもので、単純な発声機能からは更に一段も二段も積み上げたものと言えます。
アスリートと同じように身体の特殊な機能を要する”歌う”という分野においては、毎日いくら本やネットなどで勉強しても、実際に発声や歌唱をして身体に覚えさせなければ発声機能や歌唱能力は向上しないのです。
また、声帯を含む喉周りの筋力もトレーニング不足や加齢によっても弱り、潤いや柔らかさ、しなやかさまで失われてくるのですが、身体機能の衰えが大きくなった中高齢の方でもレッスンで目に見えて声が出るようになり上達される人が多いのは、トレーニングによってそれらの機能改善や向上が作られるためです。
また「質より量」の意識で挑みたいのは、作詞や作曲においても同じです。
10曲程度でも作った経験がある人なら、大方、処女作よりも作曲を重ねた作品のほうがクオリティが上がっていると実感できることのほうが多いはずでしょう。
作品量の乏しいアマチュアがスピード感を持たずにやってしまうと、大方、自分の作品に対するフレッシュさも失われ、時間をかけた割にはこんなものかという作品になりますから、創作のテンポを落とさないことも強く意識しましょう。
とくに実績の無いアマチュアや新人の段階で制作スピードが上がらないと、作品の本質的なクオリティも思ったように上がらず、スローな仕事ぶりから周りの評価や期待すら落としかねません。
一つここでアドバイスするとすれば、曲や歌詞は1つのアンサーに無理に絞らず、悩んだら2パターン、3パターンを作るようにしましょう。
1つに絞ろうとするから作業が立ち止まる事も多いものです。
早くからパターンを絞ろうと考えるばかりでなく、悩んだら拡げてしまってもいいのです。
人に評価を求めた場合、あなたの選択や感覚とは違うもののほうが気に入ってもらえる可能性だってあります。
悩んで作業の手や創作の熱を止めるよりも、労力を惜しまずにひとまず全部やってしまいましょう。
結果、発想したパターンの中での優劣が、計らずともどこかの時点で明らかになりますが、そこで採用されなかったボツのパターンは次のアイデアや自分の能力になり、別曲へと姿を変えることも可能ですから、全てが無駄になるわけではありません。
何よりアマチュアが自分の歌唱技術や作品のクオリティを上げるには、豊富な練習量や創作量が必要です。
「質より量」
ここでは、「質は量から作られる」ものと意識して、短期間で大きなスキルアップを目指し精進しましょう。