現代の音楽シーンは、アーティストが自分の言葉とメロディで思いを伝える「シンガーソングライター」が主流。
作り手は、歌い手の持ち味や、美味しい部分を見つけて、上手く引き出すことを考えましょう。
アーティストが自身の言葉やメロディで、等身大のメッセージを作れるというメリットがある反面、実は作品のクオリティは低下しているともいわれています。
DTMが普及し音楽制作が安易になったことや、制作サイドのコスト面など、様々な理由が考えられますが、アマチュアの場合、歌い手のことを十分考えられずに制作されていることが要因となっているものが多い印象です。
昔は、作詞家、作曲家といった、それを生業にするプロが活躍されており、やはり、そのクオリティは高いものでした。
例えば、エアロスミスがバンドの低迷から見事に復活を見せつけたアルバム「パーマネント・バケイション」に収録されている名バラード「Angel」は、ヒット請負人と呼ばれる名作家のデズモンド・チャイルド(Desmond Child)が手掛け、バンドの長所やボーカルのスティーヴン・タイラーの声を理解し、その能力を十分に活かしたドラマティックなバラードになっていることが分かります。
一流の作家は、そのアーティストの美味しい部分を見つけて、上手く引き出す事が出来るのです。
また、プロの作家を使うという事は、自分の発想には無い、新しい風を取り込む事にもなります。
デズモンド・チャイルドを起用して作られたバラード「Angel」からも、このアルバムにかけるエアロスミスの本気度や意気込みを感じとることができます。
アーティストオンリー、もしくは、同じ集団で制作し続けるということは、似かよってしまうものにもなりがちです。
それが良くも悪くもアーティストの「らしさ」にもなるのですが、努力や挑戦を怠ればマンネリにも繋がると言えます。
川の水は動いてこそ澱まないのと同じでしょうか。
意欲的なアーティストは、それを避ける為にも、学び、新しい事にチャレンジしたり、色々な刺激を受けるよう努力をしていきます。
今も第一線で活躍をみせるマライア・キャリーなんかも良い例ですね。
時代の寵児や、流行のサウンドを上手く自分のものにし、アルバムごとに見せ方を変え、時代に適応している事が分かるでしょう。
実力があるからこそ、様々なアプローチが出来るとも言えますが、エアロスミスやマライア・キャリーが、このフットワークです。
流れの速い音楽シーンの中で、長く、今なお第一線でいられる理由、セールスできる理由が分かりますよね。素晴らしい感覚だと思います。
僕個人はプロの作家の起用は大歓迎です。
聞き手としては、本当に良い作品や技術を聞きたいですし、益々、音楽シーンを磨き上げ、良質のものに変えてもらいたいですからね。
シンガーソングライターだから何でも良いんだ。オリジナルさえ書ければいいんだと言うことではないのです。
歌い手の能力を十分に理解し、その魅力を引き出す能力やセンス、また、作品力の向上とマンネリを防ぐために、常に新しい学びや挑戦が必要になるという事を忘れてはなりません。