レッスンをすると多くの生徒さんがどんどん高音を出せるようになります。
例えば、男子生徒の多くは発声でA5のソプラノパートの音も当てるようになりますが、やはりC6以上にもなると次第に当てられる人は減って、A6ともなると2割程度、すなわち10人のうち2人くらいしか出せない音となります。
しかし、それでも100人いれば20人、1000人いれば200人、一万人いれば2000人もの人が出せるということになりますよね。
世界中に一体どれだけの数のボーカリストがいるのか想像してみて下さい。
大切なことは、どこまで最高音が出せるかではなく「その声の魅力」や「フォルム」「ムード(気持ち・ソウルの表現)」なのです。
通常、成人男性だとA5にもなると言葉が明瞭にならず、技巧や雰囲気を加えることもできず、魅力的に歌うということは困難な音域となります。
音やリズムを正確に当てるというだけでいいのであれば、もはやボーカロイドに軍配が上がるはずです。
しかし、このボーカロイドは名ボーカリストとして後世まで名が残るでしょうか?
ピッチやリズムがどうでもいいというわけではありません。
やはり、プロとアマではピッチやリズムの精度にも差があることが多いですし、現代音楽の規律を作ることで、アンサンブル、ハーモニーが美しく整うわけですから大切な要素です。
しかし、僕らは「このアーティストの声や歌はグッと来る」というように、ボーカルの声の雰囲気からも作品の主人公の心情や歌い手の歌心までを感じとり、評価しています。
ピッチやリズムなどカラオケ機器が採点する要素だけではなく、「その声の魅力」や「フォルム」「ムード」にも意識を傾け、日々のトレーニングでは感情豊かに表現出来る音域を増やすようにしましょう。