COLUMN

【スキルアップ】【DTM・作詞・作曲】【音響機材】

2020.3.29

初心者におすすめ、DTMで楽曲のアレンジやミックスを上手にまとめる方法
~「音像の定位~奥行きを作る(1)」

新型コロナウイルスによって、みなさんカラオケやライヴなど歌唱の実践練習が減ってると思われますので、今回も、引き続き、さらに初心者に役立つDTMの知識をコラムしましょう。

しかし、時間と労力をかけて育てた貴重な声や感覚は失くさぬようキープしましょう。
経験上、鍛えた喉やミックスボイスなどの感覚、とくに覚えたての技術は、少しでも休んでしまうと、そのコツや感覚を見失うといったことが、よく起こりました。
スポーツ選手と同じですね。
もう悔しくて悔しくて、良いときの声の感覚やコツを取り戻そうと、同じ意識で何度も何度もやり込むんだけれど、なかなかその感覚が戻らない。
結局、その感覚は、暫く、ときには数ヶ月と、やり込まないと戻らないことがほとんどです。
だから、良い感触や感覚を掴んだときは、もうこのまま寝ないぞなんて、よく思いました。
感覚を失った時や迷った時に役立てようと、ボイトレノートを作り、日々の感覚や気をつけるべきことを書き留めるようになりました。
このご時勢で練習不足となってる多くの人は、貴重なスキルを失くさないように、
また、それぞれの目標達成までも休ませ、遅らせてしまわないようにしましょう。



さて、前回はPANを使っての各パートの棲み分けをしてもらいましたね。

PANでは、横のスケール感を表現できましたが、今回はサウンドの奥行き・前後の定位を考え、各パートのサウンド、棲み分けを立体的なものにブラッシュアップしてみたいと思います。
ソフトやプラグインによっては、5.1chサラウンドに対応しているものもあり、5.1chでリスニングできる環境を想定するのであれば、単純にそういった設定を使うのもありですが、ここでは一般的なステレオ環境で、奥行きを作ることを考えてみます。




PANのツマミはLRしかないけど、奥行きってどうするの?!
と思う方もいるかもしれません。

確かに、基本的にPANで作れるのはLRのバランス。
奥行きを表現するために、まず試してほしいのは、フェーダーコントロールとコンプレッサーです。

ミキサーでは主に”フェーダー”というものを使って、音量をコントールします。
音量を操作する”フェーダー”は、基本、歌唱やプレイをそのままで(ダイナミクス(大小の差)の変化も無いまま)、それごと大きくしたり小さくします。

↑アナログミキサーなどの一般的なフェーダー


↑DTMソフト「Logic X」 内蔵ミキサー内のフェーダー



画で想像するならば、”フェーダー”を動かすと、遠くにいる友人が近づいたり離れたりして、
友人が大きくなったり小さくなったりするイメージで、音像が奥に入ったり、前に出てくるということです。




ミックスでは時間経過とともに、フェーダーを細かく動かすこと(ムービング)も一般的で、歌唱に抑揚を付けたかの様な細工をフェーダーコントロールで施すこともあります。


↑DTMソフト「Logic X」 でのオートメーションフェーダー(ムービング設定)



それに比べコンプレッサーは、初心者の人にごく簡単に説明するならば、大きな音を抑え込んで、全体的な聞こえ方を補正する機械で、音量の差(ダイナミクス)が大きいパートや楽曲に用いられます。
(実際は、入力された音に対して、どのようにコンプレッションするかを、かけ始めるタイミング(アタック)や、効果を望む音量の目安(スレッショルド)、比率=効果の度合(レシオ)などの設定を調整して、どのように抑え込むかをコントロールします。)
結果、音圧が上がるという変化がサウンドに現れることになります。
例えるならば、友人の目元や口元の表情をハッキリさせるために圧縮してから出力(大きく)させます。細部まで見えやすく加工してしまうイメージですが、フェーダーコントロールとは違い、もともとの実体には加工が施されます。(実際は、時間とともに、その効果具合が変わるのですが、以下の絵は、あくまで二次元での例えですので、単純さをご勘弁下さい)




ボーカルの場合、歌唱スタイルにもよりますが、ウィスパーボイスのような小さな声と、
張りのある大きな声を備えた、一般的にダイナミクスが大きいパートですから、
ミックスでは、しっかりとコンプやリミッターがかかっています。

声量の無いアーティストは、迫力を付ける為に強めに加工処理していることが多いですから、本来、聞こえない様なブレスの音も大きくなってたりします。
コンプ加減に気をつけて聴いてみると、アーティストの声量や特色、各バースやフレーズの発声の特徴を感じられますから面白く、勉強になりますよ。

また、普段、クラシックやジャズなどのジャンルを聴き慣れてない人が、始めの演奏が小さいからとボリュームを上げて聴いていると、壮大に盛り上がった所で慌ててボリュームを下げる、なんてことが起こりますよね。
現代音楽では、良いのか悪いのか、そういったことが起こらないように、聴きやすいようにコンプやリミッターで調整されているわけです。
誰もが静かに見入り聞き入るような映画館を想定した、映画のダイナミックな音声やサウンドと、邪魔の多い家庭の環境においてのTV番組やCMのサウンドとの違いも、そうかもしれません。
CMでは、聞き取れない所が無いように、押し売りの様に、かなり音圧が上がってますよね。


一般に、コンプレッサーやリミッターはディストーションなどと比べると、音色を派手に変えたり、音質を決めるような印象が無いため、アマチュアがこだわりを持たない機材だと思いますが、マイクと同じように、音の入口に近く、サウンドを大きく左右するポイントや根幹であることから、プロは強いこだわりを持つことが多いのも特徴で、ボーカルやドラムの場合、コンプから得られるマイルドなドライヴ感をエフェクト的に使用することも一般的です。


↑ビンテージコンプの名器「UREI 1176」
上段1966年に作られた初期モデル、ブラックパネルとなった中期型1176LN(Rev. F)、シルバーパネルの1176LN(Rev. H)。
これら「UREI 1176」をシュミレートしたモデルやプラグインも多いが、各メーカーによるサウンドの特色があるため、オリジナルにこだわる人も多い。



コンプは、聴き手に心地よく聴いていただく上でも必要不可欠な機材ですが、効果をかけるほど、基本、本来の素材やプレイから得られる抑揚や表情は無くなりますので、やはり各パートのコンプ加減は見極めたいものです。
ボーカリストはボリュームだけの歌唱表現でなく、声色としての表情・声色変化などで歌唱表現が作れるように、スキルを育てておきたいですね。

以上、前後の奥行きを表現するには、まず単純に音量・音圧などのコントロールで、明瞭であるかどうかです。

なんだ、そんなことか、簡単だと思う人もいるかもしれません。
しかし、経験者なら、ボーカルトラックや各パートをはっきりと見せることが、とても難しいことだと理解できるでしょう。
なぜなら、下手なボーカルや演奏は、そもそも一言一言、一粒一粒の音・輪郭が崩れているために前へ出にくく、また、そういったパートは心理的にも音量を小さくして隠したくなるものなのです。

そういったことが起こらないためにも、やはり、各パートがスキルアップすることが必要不可欠であり、そういった個々の努力・スキルアップが最後はバンド全体のサウンドクオリティを押し上げるものだと認識し、それぞれが日々努力、精進せねばなりません。